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Retailing Works.チェーンストアの工業化を考える

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経営コラム

誰が決め、誰が実行するのか

2026年10月12日

新商品の導入担当は決まっている。それでも、納品が遅れたり、予定した棚が使えなかったりすると、仕事が止まることがあります。「誰が作業するか」は決まっていても、「条件が変わったときに誰が決めるか」が曖昧だからです。

商品部と店舗の役割分担では、担当者の名前に加えて、判断できる範囲と相談先までそろえます。今回は、一つの商品導入を例に、その決め方を考えます。以下の場面や担当の置き方は説明用の架空例です。実際には、自社の職務と権限に合わせて読み替えてください。

1.決める・実施する・確認する仕事を分ける

「新商品を売場に出す」という仕事を、そのまま一人へ渡すと、どこまで任せたのかが伝わりにくくなります。

導入する商品、数量、場所、実施日を決める仕事があります。その決定に沿って、納品を受け、旧商品を移し、陳列と売価表示を整える仕事があります。最後に、指定した状態になったかを確かめ、差異を返す仕事があります。

一人が複数を担うことはあっても、決定・実施・確認の区別は残します。「作業を終えた」という報告と、「販売できる状態を確認した」という報告を分けるためです。

第2回では、棚割りの計画と実際を照合しました。差異が分かったら、次に必要なのは、その差異にどう対応するかを決める人です。

2.判断できる範囲を、条件で書く

担当欄に「商品部」「店舗」と書くだけでは、例外が起きたときに判断先を探すことになります。判断を担当する職務を決め、対象の仕事について担当者まで特定します。

例えば、決められた棚割りの範囲で作業順序を調整することと、導入商品や陳列位置を変えることは、別の判断です。両方を一括して「店舗判断」とすると、任せた側と任された側で理解がずれるかもしれません。

「この条件なら担当者が決める」「この範囲を超えたら相談する」と書き分けます。棚の寸法、作業時間、納品数量など、判断の前提になる情報も同じ場所に置きます。判断の権限だけを渡しても、必要な情報がなければ決められません。

3.例外時の相談先と、回答期限を決める

新商品が予定時刻までに届かない場面を考えます。店舗は「未納です」と報告するだけでなく、確認した納品状況、旧商品の残数、作業に使える時間をそろえます。確認できていないことは、未確認と書きます。

判断担当は、予定どおりに実施するか、延期するか、一部だけ実施するかを、決められた権限の範囲で判断します。相談を受けた人に権限がなければ、誰へ引き継ぐかまで決めます。

次の表は、この一場面を整理した架空の記入例です。役職名や時刻は自社の条件に置き換えてください。

整理する項目

記入例:新商品の納品が遅れた場合

決めること

翌朝予定の棚替えを実施するか、延期するか

判断担当

商品部で、この導入の実施日変更を決める権限を持つ担当者

実施担当

店舗の売場担当者。決定を受け、商品と表示を変更する

確認担当

店舗の部門責任者。商品・陳列位置・売価表示と未完了項目を確かめる

判断できる範囲

店舗は既定の範囲で作業順序を調整する。導入日・商品・陳列位置の変更は判断担当へ相談する

例外時の相談先

判断担当が不在なら、事前に決めた代行者へ同じ情報を渡す

回答が必要な時点

前日15時まで。届かなければ代行者へ確認し、変更作業の開始前に実施可否を決める

回答期限は、作業を始める時刻から逆算します。回答を受けてから、人員や商品を準備する時間が必要だからです。期限を過ぎても返答がない場合の連絡先と、判断が済むまで着手しない作業の範囲も、あらかじめ決めておきます。

4.管理者が、実行できる条件を整える

役割表を作っても、担当者に時間がなく、手順の訓練も受けていなければ、仕事は進みません。管理者は、作業時間、人員、商品と備品、最新版の指示、必要な訓練がそろうかを確認します。

店舗に実施を任せるなら、商品部から何をいつまでに渡すかも決めます。店舗から判断を求めるなら、商品部の誰がいつ回答するかを決めます。受け渡す側と受け取る側の両方に、期限と完了条件が必要です。

AIやアプリを使う場合も、この分担を先に明らかにします。報告を整理し、未回答を知らせる機能は役立ちますが、回答がないことを承認と扱って作業を進める仕組みにはしません。どの情報を見て、誰が決めたかを残します。

5.判断の結果を、次の仕事へ戻す

実施後には、何を決めたか、その理由、店舗が実施したこと、確認した結果を続けて記録します。決定内容が途中で変わった場合は、いつ、誰が、何を変えたかも残します。

仕事が止まった箇所があれば、担当者の注意だけで解決しようとせず、足りなかった情報、判断範囲の曖昧さ、相談先や回答期限を見直します。毎回同じ確認をしているなら、判断基準として手順へ組み込めるかを検討します。

こうした見直しを重ねることで、次の担当者も同じ条件を確かめて仕事を進められるようにします。

今週、自分の仕事で試すこと

次の商品導入から、判断が必要な場面を一つ選んでください。上の七項目を、商品部と店舗の関係者で埋めます。まずは「条件がそろわないとき、誰が、いつまでに、何を決めるか」を声に出して確認します。

実施後は、その決定が期限までに届いたか、決定どおりに実施できたかを振り返ります。記入できなかった欄を一つずつ具体化することから、役割分担を仕事の中で使える形にしていきましょう。

続けて読む・学ぶ

次回のテーマは「同じ数字を見て話すための準備」です。店舗・商品・日付・数量・金額の意味を合わせることを考えます。

佐々木桂一

佐々木 桂一

リテイリングワークス株式会社 代表取締役

リテイリングワークス株式会社 代表取締役。ジェーソン社長として株式上場、大黒天物産副社長として東証一部昇格、富士薬品専務としてドラッグストア事業の売上高3,000億円突破に携わる。バイヤーから物流・IT・経理・人事まで自ら担い、小売業の仕組みづくりを支援。