
PROFILE
佐々木 桂一(ささき けいいち)
リテイリングワークス株式会社 代表取締役
佐々木桂一は、ジェーソン代表取締役社長として株式上場、大黒天物産取締役副社長として東証一部への昇格、富士薬品専務取締役ドラッグストア事業本部長としてグループ10社の統合とドラッグストア事業の売上高3,000億円突破に携わり、売上高170億円から3,000億円超までのチェーンストア経営を担ってきた。バイヤーとしての仕入れとPB開発から、店舗運営、物流、情報システムの自社開発、経理・財務と決算・申告、人事制度と労務、株式上場とIR、M&Aまで、チェーンストアの実務を自ら担ってきた。2017年にリテイリングワークス株式会社を設立し、スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売業と消費財メーカーの経営と仕組みづくりを支援している。月刊マーチャンダイジングに「情報技術(IT)を活用したチェーンストアづくり」を連載中。指導する内容は、すべて自ら実践または指導してきたものである。
なぜ、チェーンストアの工業化を発信するのか
大学時代に、渥美俊一先生の本に出会いました。チェーンストアづくり、マーチャンダイザー制度。小売業を工業化して、「基幹産業」としてのチェーンストアをつくる。その考え方に憧れたのが、私の出発点です。
商業の一番の問題は、人を育てること、とりわけ技術者を育てることです。技術者は長期の教育を前提にしなければ育ちません。そのためには、働く人が定着できる労働環境が要ります。渥美先生は、経営戦略論・技術論(システム論)・組織管理論を学んだ技術者集団(テクノクラート)を育てるために、ペガサスクラブを立ち上げました。
私はその志を、先生の晩年に、直接の指導を通じて受け取りました。ジェーソンの上場をはじめ、先生の指導がなければできなかったことが数多くあります。多くの小売業の経営者と出会えたのも、先生のおかげです。
その後の3社の経営で、働く環境と生産性は同時に良くできることを確かめてきました。ジェーソンではサービス残業をなくし、大黒天物産では3割を超えていた離職率を5%未満に下げ、富士薬品ではサービス残業ゼロと有給休暇の取得率向上を進めながら、いずれも収益を伸ばしました。
渥美先生とは、日本のチェーンストアの工業化について数多く議論しました。その内容と、現場で確かめてきたことを、後の世代に伝える義務があると考えています。このサイトは、そのための場所です。
3人の師から受け継いだ知の系譜
渥美 俊一 氏 ― チェーンストア理論 1995年頃からジェーソンとして指導を受け、1999年から2010年まで直接、一対一の指導を受けた。標準化と集中化、生産性を第一に置く経営、マーチャンダイザー制度など、チェーンストア経営の原理原則を学んだ。
山岸 十郎 氏 ― 物流と仕組みづくり 元パルタック。ペガサスセミナーで学んだ物流を中心とする仕組みづくりで、今日のドラッグストアの隆盛の基盤を築いた。現場でのマネジメントと物流オペレーションなど、「仕組みづくり」の薫陶を受けた。富士薬品への転職も、山岸氏の勧めによる。
守護 陽慈 氏 ― 人として、商人として 2010年から現在まで、「人としてどうあるべきか」「商人としてどうあるべきか」を学んでいる。
略歴
| 年月 | 経歴 |
|---|---|
| 1958年 | 岩手県生まれ |
| 1979年 | 税理士試験 簿記論 合格(大学4年時) |
| 1980年4月 | 株式会社ダイエー入社。盛岡店庶務課 |
| 1984年 | ダイエー退社。盛岡市で緑が丘ショッピングセンターの事務局 |
| 1988年10月 | 株式会社ジェーソン入社。商品部バイヤー兼営業企画担当次長 |
| 1994年4月 | 同社 取締役店舗運営部長 |
| 1999年6月 | 同社 常務取締役 |
| 2001年5月 | 同社 専務取締役 |
| 2003年5月 | 同社 代表取締役社長 |
| 2007年4月 | 同社 大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場(現在は東京証券取引所スタンダード市場) |
| 2008年5月 | 同社 退任 |
| 2008年6月 | 大黒天物産株式会社入社。同年8月 取締役副社長兼経理部長、2009年4月 取締役副社長兼管理部門担当 |
| 2012年6月 | 同社 東京証券取引所第二部から第一部へ昇格(現在はプライム市場) |
| 2013年1月 | 同社 退任 |
| 2013年2月 | 株式会社富士薬品 専務取締役ドラッグストア事業本部長 |
| 2015年6月 | 同社 取締役専務執行役員ドラッグストア事業本部長 |
| 2017年6月 | 同社 取締役退任 |
| 2017年7月 | リテイリングワークス株式会社(2017年4月設立)代表取締役。現在に至る |
担ってきた職能
チェーンストアの組織論でいう3階層5職能(オペレーション・ライン、クリエイティブ・ライン、ライン・スタッフ、サービス、スタッフ)を、すべて経験してきた。主な職能と、担った会社は次のとおり。
| 職能 | 担った会社と内容 |
|---|---|
| 商品(バイヤー・商品政策・PB) | ジェーソン:家電・雑貨のバイヤー、食品・雑貨の仕入れ、中国の現地法人を活用した開発輸入によるPB開発富士薬品:全部門のバイヤーへの個別指導、商品政策・ベンダー政策、工場での原料仕入れ、JBP現在:顧問先のバイヤー指導、取引先とのトップ面談、商談への同席 |
| 店舗運営 | ダイエー:店舗の後方業務と業務効率化ジェーソン:店舗運営部長大黒天物産:店舗作業のIT化富士薬品:約1,200店舗の運営 |
| 物流 | ジェーソン:物流センターの設置、自動補充大黒天物産:物流の管掌、物流センターの運営改善現在:物流改善の支援 |
| 情報システム | ジェーソン:自動補充・店舗支援システムの自社開発大黒天物産:情報システムの管掌、自動発注・店舗作業システムの自社開発富士薬品:データベースの再構築、自動発注、Web帳票現在:基幹系の導入、生成AIの活用 |
| 経理・財務 | 大黒天物産:経理部長として法人税等の決算・申告、上場後のファンド等とのIRリテイリングワークス:自社の決算・申告(現在は税理士に委託) |
| 人事・労務 | ダイエー以来、人事事務・社会保険事務ジェーソン・大黒天物産・富士薬品:人事制度の設計、労務コンプライアンスと働き方の改革現在:人事制度と人事・社会保険事務の指導 |
| 管理部門・内部統制 | ジェーソン:管理部門の基礎づくり、内部監査・内部統制の強化大黒天物産:管理部門全般 |
| 株式上場 | ジェーソン:2007年の上場(申請・審査対応)大黒天物産:2012年の東証一部昇格(管理体制づくり・審査対応) |
| M&A | 大黒天物産:長野県のスーパーマーケット「西源」富士薬品:ユタカファーマシーの完全子会社化 |
| 製造・加工 | 大黒天物産:パン・豆腐工場の生産ラインの安定化、農業生産法人の立ち上げ現在:スーパーマーケットのプロセスセンターづくり |
| 店舗開発 | 大黒天物産:店舗開発の管掌富士薬品:店舗開発部員の教育 |
| 教育・マニュアル | ジェーソン・大黒天物産・富士薬品:マニュアルと教育の仕組みづくり、幹部教育 |
| 経営全般 | ジェーソン:代表取締役社長富士薬品:ドラッグストア事業本部長(グループ10社) |
各社での仕事と成果
ダイエー(1980〜1984年)
- 年商120億円の盛岡店庶務課で、庶務・出納・クレジットカウンター・サービスカウンター・POP・値札・電話交換の後方業務を一通り担当
- 人事事務・社会保険事務の担当
- 1981年から主任。部下40名の管理、店舗全体の業務効率化、新店と東北各店の後方業務の指導
- 本部から届く経営帳票と、中内㓛社長の朝礼を伝える「社長ブリテン」を毎週読み込み。古いマニュアルの改定を本社に提案
- 1983年、現場の情報と有価証券報告書などの分析をもとに、中内社長あてに「2000年までにダイエーは破綻する」というレポートを執筆
- 退社後の1984〜1988年、盛岡市で地域活性化のための緑が丘ショッピングセンターの事務局として、核テナントの誘致から開業まで担当
ジェーソン(1988〜2008年)
- 家電・雑貨のバイヤーとして、仕入れから棚割り・売場づくりまで担当。売上高・粗利高・在庫効率の改善。食品・雑貨の仕入れも担当
- 中国の現地法人を活用した開発輸入によるPBの開発
- 営業企画担当次長として、業態をディスカウントストアからバラエティストアへ転換。組織、教育の仕組み(マニュアル)、商品政策、マネジメントの仕組み、管理部門の基礎づくり
- ウォルマート本社(ベントンビル)を訪問し、経営幹部との面談でデジタルを活用した仕組みを学習
- 店舗運営部長として、サービス残業ゼロと、店舗作業・IT活用を中心とする業務の改革
- 自動補充システムと店舗支援システム「JIOS」を自社開発(POSレジ以外、サーバーの組み立てから運用まで社内)
- キャッシュフローをマイナスからプラスへ、売上高経常利益率を1%未満から3%超へ
- 1999年から渥美俊一氏の直接指導のもと、EDLP(毎日同じ安さで売る価格政策)と死に筋の整理を進め、売上高至上主義から生産性至上主義へ転換。組織改革、情報システム、物流センターの設置
- 労働生産性1,000万円突破、売上高経常利益率5%、ROA15%
- 人事制度の設計
- 社長として、収益の安定、高速出店、内部統制の強化。2007年4月に株式上場(労務コンプライアンスを理由に審査を通らない企業が多い時期の上場承認)
- 退任時(2008年)の売上高170億円
大黒天物産(2008〜2013年)
- 渥美氏の「5年以内に首になるだろうが、経験のために行け」という言葉を受けて入社
- 取締役副社長兼経理部長、のちに管理部門担当。情報システム、業務改革、物流、店舗開発を管掌
- 法人税等の決算・申告、上場後のファンド等とのIR
- 業務システム室を設立し、ムリ・ムダ・ムラの調査と削減。毎月のコスト削減目標と進捗の管理。マニュアルの全面的な見直しと現場への定着
- ウィークリーマネジメント(週単位で計画と実績を確かめて直す運営)、需要予測による自動発注、店舗作業のIT化(DSS)などを自社開発(パッケージは基幹系のみ)
- 人事制度の設計。労務コンプライアンスの遵守、残業削減、休日出勤なし、長期休暇を取れる体制により、3割超の離職率を5%未満へ
- 売上高を入社時の600億円から4年で1,000億円超へ
- 2012年6月、東京証券取引所第二部から第一部へ昇格(現在はプライム市場)。昇格に向けた管理体制づくりと審査対応
- 長野県のスーパーマーケット「西源」のM&A、農業生産法人「大黒天ファーム」の立ち上げ、パン・豆腐工場の生産ラインの安定化、物流センターの運営改善
富士薬品(2013〜2017年)
- 山岸十郎氏の勧めで入社。渥美氏の生前の言葉「改革を本気でするなら5年以上はやるな」に従い、最大5年の約束で就任
- 専務取締役ドラッグストア事業本部長として、グループのドラッグストア10社・約1,200店舗・社員とアソシエイト約2万人を運営。各社の代表取締役・取締役を兼ね、マネジメントを統合
- ユタカファーマシーの完全子会社化
- 全部門のバイヤーへの仕事の進め方の個別指導。トップ面談などを通じた商品戦略とバイヤーの行動の直接マネジメント
- 商品政策・ベンダー政策の立案、工場での原料仕入れ
- メーカー・卸とのJBP(ジョイント・ビジネス・プランニング:取引先と共同で立てる事業計画)。リベートの基準を仕入れ段階からPOSの販売数量へ改める「セルインからセルアウトへ」の転換
- データに基づく棚割りと発注の体制づくり
- グループ一体のウィークリーマネジメント。マニュアル・帳票・システムの一本化、幹部教育
- 人事制度の設計
- RFID・画像認識の実装実験
- 初年度は不良在庫などの損切りで減益、2期目以降は増収増益。グループの全子会社を黒字化
- ドラッグストア事業の売上高を、就任時の約2,600億円から3,000億円超へ
- サービス残業ゼロ、休日出勤の削減、有給休暇の取得率向上。予定どおり退任
現在の活動・連載・講演
- 2017年4月、リテイリングワークス株式会社を設立。7月から代表取締役として活動
- 支援先:売上高8,000億円規模の企業から創業間もない企業まで。食品スーパーマーケット、ホームセンター、ディスカウントストア、ドラッグストア、衣料品スーパー、消費財メーカー、IT企業など
- 支援内容:経営戦略、財務・経理、情報システム(基幹系の導入を含む)、組織づくりと人事制度、人事・社会保険事務、バイヤーの育成、物流の改善、プロセスセンターづくり、プライベートブランドの開発、生成AIの活用
- バイヤーの指導、取引先とのトップ面談による調達先の拡大、商談への同席
- 小売企業2社の社外取締役
- 連載:月刊マーチャンダイジング「情報技術(IT)を活用したチェーンストアづくり」(2023年9月号から連載中)、ダイヤモンド・チェーンストア「食品小売業のインテリジェンス化」(2023年8月〜2025年7月)
- 寄稿:日本食糧新聞など
- 講演:全国スーパーマーケット協会、CGC、日本リテイリングセンター(ペガサスクラブ)、NFI定例セミナーなど
- 書籍:『チェーンストアの設計図』『マーチャンダイザーの六工程』を執筆中