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Retailing Works.チェーンストアの工業化を考える

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経営コラム

棚割りの計画と実際の売場をつなぐ

2026年10月3日

白黒の棚割指示書の模式図。棚G01の3段を下から数え、各段のSKUを左から列1・2・3に配置。各区画に商品番号とフェーシング数、各棚に棚板の取付位置を記載している。

棚割りを決め、店舗へ伝えた。それだけで、計画した売場ができたとは限りません。

予定した商品が届かない。以前の商品が残り、新商品の場所を空けられない。棚を変更したあとも、売価表示が以前のままになっている。いずれも説明用の場面ですが、計画と実際の間に何が起きたかが分からなければ、次の対応を決めにくくなります。

第1回では、新商品を入れる前に商品部と店舗でそろえる五つのことを考えました。今回は、棚替えの準備と訓練を整えたうえで、「実施した事実と差異を返す」を一つの棚変更で試してみます。

1.何と比べるかをそろえる

まず、確認する棚と、計画の版を決めます。店舗、売場、棚の位置、変更する商品、実施予定日を書きます。同じ棚でも、古い指示と新しい指示を見ていれば、話がかみ合いません。

システム上の棚割りと店舗の棚割りを照らし合わせるには、位置の表し方をそろえる必要があります。棚(ゴンドラ)の番号、正面から見た向き、段と列の数え方、SKU(商品を区別して管理する単位)、フェーシング数(正面に並べる商品の数)を共通にします。列をSKUの並び順で数えるのか、陳列する一面ずつで数えるのかも、あらかじめ決めます。

棚板の高さ・奥行き・取付位置、仕切り板の位置も対応させます。例えば「下から3段目、左から2番目のSKU、2フェーシング」と、誰が読んでも同じ場所と数量を指せるようにします。段の数え方や支柱穴の番号は、使用する什器と社内基準に合わせて定めます。

最初から売場全体を記録し直す必要はありません。今回変える箇所を一つ選び、比較の対象をそろえます。

2.棚替えの種類ごとに、手順を決めて訓練する

終売商品を一つ差し替える場合と、棚全体を組み替える場合では、準備する物も作業の順序も変わります。少なくとも、次のような棚替え方法を分けて店舗の作業マニュアルにします。

  • 1対1の差し替え:終売する1SKUを新しい1SKUへ替える。旧商品の数量と処理先を確認し、撤去、必要な清掃、新商品の陳列、プライスカードの交換、照合の順を決める。同じ場所でも、商品の寸法やフェーシング数が合うかを確認する。
  • 1対Nなどの組み替え:一つのSKUの場所を複数SKUへ分ける場合など。周辺商品も含めた配置、各SKUの幅とフェーシング数、仕切り板の位置を決め、旧商品と新商品の混在や表示の取り違えを防ぐ。
  • 棚板の位置変更や、多数のSKUの入替え:ゴンドラ内の棚板の高さ・段数を変える場合や、棚全体を組み替える場合。作業範囲、商品の一時置場、撤去する順序、棚板・仕切り板の取付け、陳列、表示、確認までを一続きの手順にする。ゴンドラ自体を移す場合は、その作業も分けて定める。

マニュアルは配るだけで終わらせません。店舗で実際の棚を使い、指示書を読む、商品を外す、棚板と仕切り板を取り付ける、段・列・フェーシング数を合わせる、表示を付ける、照合するところまで事前に訓練します。指導者が手本を示し、担当者が実施し、確認者が基準に沿って確かめます。多数のSKUを扱う場合は、作業人数・時間帯・分担・一時置場も訓練で確認しておきます。

プライスカードは、対象SKUとの対応、棚のどの位置に、どの向きで、どの器具を使って取り付けるかをそろえます。POPも、掲示する条件、位置・寸法、取付方法、掲示期間、交換・撤去の基準を決めます。商品や売価表示を隠さないことまでマニュアルにし、その基準どおりにできるかを訓練します。

3.外す商品、入れる商品、備品の準備を先に決める

棚替え当日に、商品の行き先や手配する人を探し始めないようにします。次のルールを商品部と店舗で決め、例外が出たときの判断先も共有します。

  • 棚から外れるSKU:残数を確認し、売り切り用の場所へ移す、他店へ移管する、返品する、所定の手続で処分するなど、採用する処理方法を決める。値下げや返品等の判断者、期限、一時保管場所、在庫記録の更新、旧プライスカード・POPの撤去まで含める。商品と在庫をどこへ移すかを曖昧にしない。
  • 新規商品の納入:本部が初回数量と納入を手配するのか、店舗が発注するのかを明確にする。納入日・数量・荷姿・納入先、店舗での受取担当と検品、一時保管場所、売場へ出す日時を決める。初回納入と、その後の補充発注も区別する。未納・不足・過納のときの連絡先と判断方法を決めておく。
  • 棚板・仕切り板などの備品:棚板の幅・奥行き、対応する支持金具、仕切り板、プライスカードホルダー、POP取付具など、必要な規格と数量を確認する。本部が送るものと店舗が在庫から用意するものを分け、手配担当、到着期限、保管場所、不要になった備品の戻し先を決める。棚替え前に、実物がそろい、対象の什器に取り付けられることまで確認する。

商品・備品・担当者・作業時間のどれかがそろわない場合に、延期するのか、部分実施するのか、誰が判断するかも決めます。店舗がその場で推測して計画を変更しなくて済むようにします。

4.棚割指示書は、白い紙に黒文字で分かるものにする

棚割指示書は、できる限りシンプルにします。商品写真やカラー印刷は不要です。白い紙に黒文字と罫線で、どの棚の、どの段・列に、どの商品を何フェーシング並べるかが分かる内容にします。

指示書には、対象店舗・売場・棚番号、版と実施日、商品の位置・SKU・必要な商品名と規格・フェーシング数、棚板や仕切り板の位置、今回の変更点を載せます。定型の取付方法や作業方法は共通マニュアルにまとめ、指示書には参照する手順番号と今回固有の注意点を短く書きます。変更箇所は「追加・移動・撤去」の文字や番号で示せば、色に頼らず読めます。

棚割指示書でSKUを識別する商品コードは、JANコード(JANCD)の13桁、またはその下5桁・下4桁で表記します。使用する桁数を統一し、短縮表記が重なる場合は13桁のコードと商品名・規格で照合します。図中の「A01」などは説明用の仮符号で、実務ではこのJANコード表記に置き換えます。

白黒の棚割指示書の模式図。棚G01の3段を下から数え、各段のSKUを左から列1・2・3に配置。各区画に商品番号とフェーシング数、各棚に棚板の取付位置を記載している。
図:提供された過去資料の形式を参考に、3段・9SKUへ簡略化した架空の例。商品番号・配置・棚板位置の数値は説明用。図を開くと拡大して確認できます。

この図では、列はSKUの並び順、Fはフェーシング数を表しています。例えば3段目の列2は「SKU A02を1フェーシング」、棚板は「支柱穴24」の位置です。区画の幅は実寸を表していません。実務では商品寸法と什器の寸法を照合し、指示した数が実際に収まることを確認します。

簡略にするとは、必要な指示を省くことではありません。別の担当者が同じ指示書とマニュアルを使い、同じ売場を作れるかを訓練で確かめます。

AIとアプリで、指示から完了確認までをつなぐ

手順と基準をそろえたうえで、AIを活用し、棚割指示書の作成、店舗のスマートフォンへの指示配信、作業終了時の棚撮影、完了確認までを一つにつなぐアプリの開発も検討すべきです。指示書だけを電子化するのでなく、本部から店舗へ指示を渡し、実施した結果を本部へ返す一連の仕事をつなぎます。

例えば、商品マスターとJANコード、棚の寸法、変更対象のSKUなどを使ってAIが指示書の下書きを作成し、本部の担当者が確認して配信する流れを考えます。店舗担当者はスマートフォンで対象の棚と最新版の指示、変更箇所、作業手順を確認し、そのまま作業に取りかかれるようにします。白黒で簡潔に伝えるという指示書の原則は、画面上でも同じです。

作業終了時にはスマートフォンで棚を撮影し、店舗・棚番号・指示の版・実施日時・担当者・未完了項目と結び付けて報告します。本部では指示と結果を同じ画面で照合し、差異への対応や再確認の指示まで返せるようにします。AIによる写真と計画の比較も確認支援として検討し、写真だけで読み取れない商品コードや数量は、現物と記録で補います。

狙いは、転記や連絡の重複、写真の探し直し、確認待ちや手戻りを減らすことです。まず一つの棚替えで試し、指示書の作成時間、店舗の作業・報告時間、確認漏れや手戻りを比べ、効率化につながったかを確かめてから広げます。

5.「完了」の中身を分けて書く

「棚替え完了」という一言では、何ができたのかが伝わりません。外したSKUの処理は済んだか。棚板・仕切り板、商品の段・列・フェーシング数は指示どおりか。プライスカードとPOPは取付基準に合っているか。必要な商品がそろい、販売できる状態になったか。実際に確認した項目を分けます。

できなかった項目も残します。未確認であれば、未確認と書きます。記録には、対象・日時・確認項目・結果を簡潔に残します。アプリで作業終了時の棚写真を報告する場合も、写真を添えたことだけで全項目を確認済みにしないようにします。

例えば「指定の場所に商品Aがない」は、観察した事実です。「納品が遅れたため」は、納品記録などで確かめるまでは原因の仮説です。この二つを分けると、次に誰が何を調べるかが見えてきます。

6.一枚の記録で、次の対応までつなぐ

次の表は、書き方を示す架空の例です。実際の企業や店舗で得られた結果ではありません。

記録すること

説明用の記入例

対象・計画の版

対象店舗の売場A、棚G01の3段目・列1、変更指示の第2版。実施予定日は○月○日

計画していた状態

旧SKUを指定先へ移し、商品Aを2フェーシングで陳列。棚板・仕切り板と表示を基準に合わせ、販売できる状態にする

確認した事実

○月○日○時、指定位置に商品Aなし。売価表示は変更済み。納品と店内在庫は未確認

原因の仮説

未納、または店内在庫からの品出し待ちの可能性。現時点では未確定

次の対応・担当・期限

店舗担当が在庫と納品記録を確認。商品部担当が供給予定を確認し、○時までに結果を共有

判断・再確認

商品部の判断担当が、そのまま待つか、計画を修正するかを決める。店舗は決定内容を実施し、日時と状態を追記する

実務では商品名や担当者などを、社内で使える具体的な表記に替えてください。社外へ共有する資料には、公開が認められた情報だけを使います。

大切なのは、差異を報告して終わらせないことです。「誰が、何を、いつまでに確認するか」「確認した結果、誰が何を決めるか」までつなげます。

7.差異から、計画と実行条件を直す

計画どおりでなかった理由を、実施した担当者だけに求めないようにします。商品と備品が間に合っていたか。旧SKUの処理先と新商品の納入担当は決まっていたか。指示の版はそろっていたか。マニュアルと訓練、作業時間と判断権限は確保されていたか。仕事を実行する条件も確認します。

店舗から返ってきた事実を受けて、商品部は計画の内容や供給条件を見直します。店舗側も、決まった対応をいつ実施し、誰が確認するかを明らかにします。変更した判断と理由を残せば、次の担当者が同じ場面で考える材料になります。

販売数量や荒利高を評価するときも、実際に売場が整った日時を一緒に見ます。予定日から販売できていた商品と、途中から並んだ商品を、同じ条件だったとみなすことはできません。実施の記録は、数字の意味を確かめるためにも必要です。

今週、自分の仕事で試すこと

直近の棚変更を一つ選び、1対1、1対N、多数のSKUや棚位置の変更のどれに当たるかを確認してください。指示書、作業マニュアルと訓練、外す商品・入れる商品・備品の準備がそろっているかを確かめ、上の表を埋めます。すでに終わった変更なら、当時の記録で確かめられる範囲に限り、不明なところは不明と残します。

次の打合せでは、その中から未確認の項目を一つ選び、確認する人と確認日を決めます。確かめたあとには、分かった事実と次の対応を同じ表へ追記します。

計画を渡す、実際を確かめる、判断を返す。この往復を一つの棚で続けることが、商品部と店舗の仕事をつなぐ一歩になります。

続けて読む・学ぶ

次回は「誰が決め、誰が実行するのか」。商品導入の役割・権限・相談先を整理します。

記事を読んで、埋めにくかった欄や実際に試して分かったことがあれば、記事へのご意見・ご質問からお知らせください。社名や個人名、非公開の情報は含めず、場面と疑問をお寄せください。

佐々木桂一

佐々木 桂一

リテイリングワークス株式会社 代表取締役

リテイリングワークス株式会社 代表取締役。ジェーソン社長として株式上場、大黒天物産副社長として東証一部昇格、富士薬品専務としてドラッグストア事業の売上高3,000億円突破に携わる。バイヤーから物流・IT・経理・人事まで自ら担い、小売業の仕組みづくりを支援。